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「オニババ化」とは

◆三砂ちづるさんの「オニババ化する女たち」のイントロ「はじめに、オニババ化とは何か」を引用させていただいております。

《引用部分》

◆はじめに オニババ化とは何か
・日本の昔話には、よくオニババや山姥(やまんば)が出てきます。たとえば、山にひとりで住む山姥が、ときおり道に迷った小僧さんを夜中に襲う話があります。私の子供たちが小さかったころ、夜寝る前に、昔話をよく読んであげましたが、「ざらんざらん、べろんべろんと小僧さんの尻をなめた」などという表現が、子ども向けの絵本に出てきて、ぎょっとしたのを覚えてます。

あれは、社会のなかで適切な役割を与えられない独身の更年期女性が、山に籠もるしかなくなり、オニババとなり、ときおり「エネルギー」の行き場を求めて、若い男を襲うしかない、という話だった、と私はとらえています。

この「エネルギー」は、性と生殖に関するエネルギーでしょう。女性のからだには、次の世代を準備する仕組みがあります。ですから、それを抑えるつけて使わないようにしていると、その弊害があちこちに出てくるのではないでしょうか。また、仕組みを使って、性と生殖に向き合ったとしても、それが喜びに満ちた経験でなければ、そのようなエネルギーは本当に満たされたとはいえません。

私長い間、日本や外国の研究機関で、母子保険、女性のリプロダクティブヘルスといった仕事に関わってきました。そのなかでたくさんの女性と出会い、女性の性と生殖について考える機会が多くありました。そこで感じたのは、女性として生まれてきたからには、自分の性、つまり月経や、性経験、出産といった自らの女性性に向き合うことが大切にされないと、ある時期に人としてとてもつらいことになるのではないか、ということです。

表現は怖いのですが、オニババ化への道です。反対に、自分のからだの声を聞き、女性としてからだをいとおしんで暮らすことができれば、いろいろな変革をとげることができるのです。それは、成長であると同時に、とても楽しい経験でありうるのですが、今の日本では、あまり大切にされていません。
「おばあちゃん」という響きはもともとやさしいものです。なつかしくて、温かくて、何でも受け止めてもらえる。親にしかられても、おばあちゃんがよしよし、と言ってくれる。

穏やかな微笑み、人生の多くの困難を越えてきた人だけが持つ、誰をも安心させる温かさを持っています。ところが、最近、やさしい、かわいらしいおばあちゃんが減りました。孫を母親と同じように、厳しい言葉でしかっているおばあちゃんをよく見ます。きつくて怖いおばあちゃんが増えていないでしょうか。

どうしてこんなふうになってしまったのでしょう。おばあちゃんたちは、穏やかに「枯れられない」何かを持っていろような気がします。人間のやるべきことは、最終的には次の世代に何かを手渡していくことだと考えると、いつまでも自分のことばかり考え、周囲に苛立ち(いらだち)をぶつけているのは、どこかで歯車がずれているのでしょう。

戦後の暮らしで、経済的に少しずつ恵まれ、理不尽なことも少しずつ減る方向にあったはずの彼女たちの人生で、何か根本的なものが満たされていない、と感じられるのです。どうやら、今の60代、70代の日本人あたりから、性と生殖、女性の身体性への軽視が始まったのではないでしょうか。
この世代の親の娘たちは、現在40、50代で、フェミニズムを生きてきた女性たちです。

「産んでも産まなくてもあるがままの私を認めてほしい」というフェミニズムの主張は、私たちに多くの恩恵をもたらし、女性の生きる場をずっと風通しよくしてきました。
親は娘がより自由に生きていくことを喜びとするものだと思いますが、6、70代の親は必ずしもこの娘たちの得た自由を喜んでいるように見えないし、娘たちも母親になんとなくすっきりしないものを感じているようで、この世代間は、なんとなくぎくしゃくしています。女性の身体性に根ざした知恵を大切なものとして伝承できなくなると、「お互いをあるがままに受け入れられない」ことになるのではないか、どこの世代間の葛藤を見て感じるようになりました。
現代をのびのび生きているように見える20代、30代の女性たちにも、この女性のからだへの軽視がしっかりと根づいています。

「別にしたくなければ結婚しなくていいよ」「仕事があれば子どもがいなくてもいいよ」という上の世代からのメッセージは、若い女性に一見自由な選択を与えているようですが、そこに「女としてのからだを大切にしない」という大きな落とし穴があることに、あまり気づかれていません。

このままほうっておけば、女性の性と生殖に関するエネルギーは行き場を失い、日本は何年かあとに「総オニババ化」するのではないか、について考えてみたいと思います。ちょっと怖い、でも、きっと興味を持っていただけるお話です。


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2012年02月09日 11:15に投稿されたエントリーのページです。

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